「市民の会」趣意書です
「吉田寮の建築文化財登録をめざす市民の会」趣意書
京都大学吉田寮は1913年(大正2年)に建設され、竣工から113年を経た現存最古級の学生寮です。木造2階建ての旧棟の大部分が創建時の姿を保っており、大正初期の大規模な木造の洋風建築として高い建築史的価値を有しています。さらに吉田寮には、旧制第三高等中学校、のちの第三高等学校(三高)の寄宿舎建材が一部再利用されていることが確認されています。明治期に京都へ誘致された高等教育機関の歴史を今に伝えるものであり、京都の近代化と学都としての発展を物語る貴重な文化遺産です。とりわけ重要なのは、この建築物が建設当時から学生寄宿舎として利用され続けてきたことです。歴史的建造物が展示施設として凍結保存されることが多いなか、吉田寮は学生によって 100 年以上住み継がれてきた「生きた建築遺産」として稀有な存在です。
しかし現在、この吉田寮旧棟が、取り壊しの危機に直面しています。
報道されているように、吉田寮をめぐる京都大学と寮生との訴訟は、2025年8月25日の和解によって終結しました。和解では、寮生の一時退去後に大学が旧棟の耐震工事(建替えを含む)を5年以内に実施することとされました。しかし、2026年4月14日に京都大学が公表した方針では、具体的な補修の可能性についての検討結果は示されないまま、旧棟を建替えるとともに、跡地に別施設を建てることを想定した記述が見られます。
京都大学はこれまでも「建築物としての歴史的経緯に配慮する」ことを表明してきました。しかし、吉田寮が有する建築的・歴史的価値をどのように評価し、どのような形で保存・継承しようとしているのか、十分な説明はありません。建物を取り壊すことは一瞬です。しかし、113年にわたり受け継がれてきた建築遺産は、一度失われれば二度と取り戻すことができません。私たちは、広く専門家や市民の力を結集し、学生が退去した後の寮舎について、十分な調査が行われないまま解体が進められることのないよう京都大学に求め、その保全と活用の方法について提言します。そのひとつとして、登録有形文化財への登録があります。
吉田寮の木造建築は国の重要文化財に匹敵する可能性があるとの専門家の見方も示されていますが、いったん重要文化財に指定されるとその後の改変は大きく制限されます。その点、登録有形文化財は内装の改修などの自由度が大きく、現代の生活にあわせた設備に更新し、未来に継承することが可能です。京都大学でもすでにキャンパス内の多くの建造物が登録有形文化財に登録され、その存在価値を高めるとともに、東山山麓に位置する吉田山周辺地域の景観の保全に貢献しています。 私たちは、京都大学のさらなる発展と地域の景観の調和を願う市民の立場から、吉田寮の歴史的価値の高い建築を文化財に登録した上で、その改修案を策定し、キャンパスの将来像を構想していくことを京都大学に求めます。また、京都市をはじめとする関係行政機関、文化財関係者、地域住民の皆様にも、この貴重な建築文化財への理解と、その保存・継承に向けた協力を呼びかけます。
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